「管楽器を吹くときには腹式呼吸が大事」と先輩に言われた。
「お腹に息を入れて」と言われたのでその通りにイメージしてみたり、日々の練習でトレーニングしてみたり。
でも実は…腹式呼吸がどんなものかあまりよくわかっていないし、できてる実感もないんです…。
楽器を吹くときに腹式呼吸が大事、とよく言われます。
しかし、
「お腹に息を入れて」
「重心を下に」
…など、腹式呼吸の練習でよく言われる言葉って、イメージ重視でいまいちわかりにくくないでしょうか?
これらの言葉に引きずられて、腹式呼吸が楽器演奏にとってマイナスになってしまっている方も見受けられます。
ここでは、腹式呼吸にとらわれすぎず、「管楽器を演奏するときの呼吸」について考えてみます。
目次
そもそも腹式呼吸とは?
まずは、腹式呼吸と、もう一つの代表的な呼吸法である胸式呼吸について整理しておきましょう。
腹式呼吸では、肺の下に位置する横隔膜が動くことで呼吸します。
胸式呼吸では、肺の周りを囲んでいる骨(胸郭:きょうかく)が動くことで呼吸します。
出典:Visible Body
特に意識しなければ、普段の生活では胸式呼吸をしている方が多いでしょう。
そのため、楽器を吹くときに腹式呼吸ができるように、練習をすることが多いと思います。
しかし…
腹式呼吸にありがちな誤解
腹式呼吸をできるようにしようとした結果、不自然な呼吸になってしまっている人が見受けられます。
「お腹に息を入れる」?
腹式呼吸で「お腹に息を入れる」と言われます。
しかし、先ほどの画像を見てもらうとわかるように、息が入るのは肺だけで、お腹には入りません。
本当はお腹に息が入らないのに入れようとすると、不必要なところに力が入ったりと、自然な呼吸ではなくなってしまいます。
「お腹を膨らませる」?
息を吸ったときにお腹が膨らむのはあくまで「結果論」です。
つまり、横隔膜が下がって内臓が押されますが、下への行き場がないので横方向に出てくるんですね。
しかし、結果だけを見て「腹式呼吸のときにはお腹を膨らませるんだ!」というのは、これも力みや不自然な呼吸のもとになります。
「息を吸ったら肺が膨らむ」?
腹式呼吸に限ったことではないですが、「口や鼻から息を吸って、肺が膨らむ」「口や鼻から息を吐いて、肺が縮む」と考えている方が非常に多いと思います。
何を隠そう私も、呼吸のことを詳しく教わるまではそう認識していました。
しかし実際は、先に肺の大きさが変わり、その後に息が出入りしています。
たくさん息を吸おうとして力んだり、頑張っている割にあまり吸えていないな、という方は、口や鼻で頑張りすぎなのかもしれません。
「肺の動きが呼吸を主導している」と意識すると、改善されることも多いです。
管楽器を演奏するときの呼吸について
そもそも管楽器の演奏で重要なのは、息をたっぷり吸って、たっぷり吐けるようになることです。
この目的が達成できれば、別に腹式呼吸とか胸式呼吸にこだわる必要はないんですよね。
ここまでに書いたことをもとに、以下のようにして自分の呼吸を観察してみましょう。
- 楽器のブレスというよりは深呼吸のように、ゆったりと息を吸ったり吐いたりします。
- 上で示した画像を確認して、肺や横隔膜が自分の身体のどのあたりにあるか、意識してみましょう。
- 肺の大きさが変わることにより息が肺に出入りし、呼吸しています。
- 口や鼻ではなく肺の動きが呼吸を主導していることを意識して、肺の動きに注目しながら呼吸してみましょう。
- 肺の周りを囲んでいる肋骨を、体の前方・わき腹・背中から触ってみます。呼吸に合わせて動いていることを確認します。
- これらの胸郭や横隔膜が、自然に、もっとたくさん動くといいな、と意識してみましょう。ただし、無理に動かそうと頑張る必要はありません。
いかがでしょうか。
ふだんの呼吸や、楽器を演奏するときのブレスとの変化はあったでしょうか。
もしこれで、お腹が呼吸に合わせて動いているなら、それは自然な腹式呼吸といえるでしょう。
お腹が動いていなくても、体が楽になったり音質が良くなったりと演奏に良い効果があるならば、こちらの呼吸を採用するのがよいと思います。
おわりに
管楽器を演奏するときの呼吸法について書きました。
腹式呼吸は、「お腹に息を入れる」など、本来の身体の動きとは異なる説明がされることも多いです。
そのため、理解しにくく、自然な呼吸を妨げてしまうことがあります。
大切なのは、本記事で示したような実際の身体の使い方・動き方を理解することです。
そのうえで、自分に合ったものや演奏に良い効果が表れるものを選ぶとよいでしょう。