フルートを吹いているけれども、速いフレーズがあまり得意でない。
指がうまく回らなくて音が抜けたり、演奏が止まったりしてしまう。
先輩に言われてテンポを少しずつ上げながら練習してるけど、あまり効果がないな…。
木管楽器の方で特に多いと思いますが、「速いフレーズで指が回らない」というのは大きな悩みの一つですね。
私も今の楽器はチューバですが、過去にピアノをやっていたので速いフレーズの難しさはわかります。
また、吹奏楽部へ指導に行くと速いフレーズに苦戦している生徒さんは多いです。
このような悩みを解決するために、指の練習をすることでしょう。
そのときに使える3つの練習アイデアと、2つの考え方をご紹介します。
目次
練習方法のアイデア3つ
以下では、わかりやすいようにこちらの譜面を練習することを考えてみます。
また、どの練習もメトロノームをかけながらやります。
ゆっくりから少しずつ練習
「速いフレーズがうまく演奏できない」というときにはたいてい、「ゆっくりから少しずつ練習しなさい」と言われます。
たとえば具体的には、
- 確実にできる、かなりゆっくり(四分音符=60くらい)のテンポから練習
- できるようになったら、メトロノームの目盛りを1つ(電子メトロノームの場合、5くらい)上げる
- メトロノームの目盛りを急いで上げすぎず、毎日少しずつテンポを速めていく
といったプロセスで練習していきます。
ゆっくりから積み上げていくので、うまくはまれば着実にできるようになります。
ただ、個人的には以下の2点が難点だと思っています。
- 練習時間のとれない方には効果が出にくい
- ある程度のテンポで「壁」ができる
楽器の練習にたくさん時間を割ける方には効果的な練習法だと思います。
しかし、週に1回しか楽器が触れない、というような方だと、積み重ねの効果が薄くなってしまいます。
せっかくテンポを上げられたのに、次の練習のときにはまたできなくなっていたり…ということもありえます。
また、ゆっくりのときは順調に進められても、ある程度速くなると、まだ目標テンポに達していないのにどうしても指が回らなくなることがあります。
その「指が回らなくなる」テンポでしばらく続けているとできるようになることもありますが、少し違う練習方法もやってみた方がよいかもしれません。
リズムを変えて練習
これも、よく提案される練習方法の一つです。
ピアノをやっていた方はおなじみかもしれません。
譜面を付点・逆付点で練習します。
この練習のポイントは、音の間隔が短くなっている部分をひとまとまりで吹くように心がけることです。
音の間隔が短くなっている部分は、実際よりも速いテンポで演奏することになります。
一方、音の間隔が長くなっている部分は実際のテンポよりも遅くなります。
テンポが速くなっている部分の音のつながりを意識して練習するといいと思います。
極端に表すと、こんな感じです。
一つずつ音を増やしていく
この練習は、個人的には結構効果があると思っています。
演奏したいと思っているテンポ(少し遅めにしてもOK)で、フレーズの最初の一音だけ吹いてみます。
おそらく、吹けますよね。
そうしたら、もう一つだけ音を増やしてみます。
二つの音が問題なくできたら、さらにもう一つ音を増やします。
こうして、実際に演奏するのと近いテンポで、一つずつ音を増やしていきます。
また、後ろから音を一つずつ増やしていく方法もありです。
この練習は、
- 本番で吹くのに近いテンポで練習できる
- 問題なく指が回る(あまり練習しなくてもいい)ところと指が回りにくい(重点的に練習する)ところがはっきりする
というメリットがあります。
音を増やしていって、もつれてきたな、やりにくいな、と感じる部分が、あなたの苦手な箇所です。
そこだけ取り出して、ゆっくり練習したりリズムを変えて練習したりできます。
過去に、16分音符4個が並んでいる譜面で音が1つだけ抜けてしまうフルートの生徒さんがいました。
この方法を提案したところ、もつれてしまう音の前後での指の感覚をつかめたのか、すんなりと吹けるようになりました。
本人も、「あ、できた!」と思わず口にしており、とても嬉しそうでした。
指回しの練習をするときの2つの考え方
腕全体に意識を向ける
指回しの練習をしていると、どうしても指先だけに意識がいきがちになりますよね。
しかし、指を動かしながらもう片方の手で触ってもらうとわかると思いますが、手のひらや腕などいろいろな箇所がかすかに動いています。
実際、人差し指から小指までを曲げるのには手のひら側のこれらの筋肉を、
伸ばすのには手の甲側のこれらの筋肉を使います。
出典:Visible Body
これらの部分も含めて腕全体を使うんだな、ということを意識しながら練習してみましょう。
少し指が動かしやすく感じるかもしれません。
また、本来の筋肉の使い方に逆らうこともないので、腱鞘炎などにもなりにくいでしょう。
息の流れや音楽も意識する
指が正確に回るようになっても、それにふさわしい息が入っていないと楽器がきちんと鳴らず、結果としてなめらかには聞こえません。
逆に、指は今のままでも、
- 息をもう少し入れてみよう
- 息や音の流れを意識してみよう
- 音を一つ一つ丁寧に見るようにしてみよう
などとお伝えすると、改善することがあります。
また、頭の中に目指す音楽の完成形があるかどうかもポイントです。
指をどう動かすかの前に、どんな風に、どんな音で演奏する(したい)かを思い浮かべてみましょう。
口で歌えないものは演奏するのも難しいので、まずは歌で表現してみるのもいいと思います。
それに合わせて指も動かしてみることで、音楽と指回しとを組み合わせた練習ができます。
おわりに
速いフレーズでの指回しについて、3つの練習方法と2つの考え方を紹介しました。
このように、一つの問題に対しても複数のアプローチや考え方がありますし、相性の良いものは人によっても違います(私がまだ知らない方法もあると思います)。
一つのやり方にとらわれないで、練習時間の中でいろいろと試していただければと思います。